全国事業者金融協会(NBFA)の意見書

意  見  書

平成23年11月吉日

全国事業者金融協会
会長  岡本 強

全国事業者金融協会(以下「当協会」という。)は、日本国内において事業者向けの金融を営む、法人会員37社で構成される国内唯一の事業者金融業者による組織であります。
当協会の会員は、全国の事業者を対象として、事業資金の融資と商業手形割引を提供し、地域経済の活性化に寄与して参りましたが、貸金業法の改正等により貸金市場が崩壊し、資金需要者への十分な資金供給ができない状況が続いております。そこで、貸金市場を正常化すべく全国事業者金融協会としての意見書をご提出させていただきます。

〔事業性資金に対する規制の問題〕 まず、貸金業法改正の目的である多重債務問題の解決は、本来、消費者と事業者を切り離して論じるべき問題でした。何故なら、消費者の消費性資金の借入による多重債務問題を解消するには、融資を抑制する政策により、その過剰な消費が抑制され、多重債務の改善が期待できます。その一方事業者は、不安定な事業収入を借入金で補填し、現金収支を改善しなければならない場合が少なくありません。これら事業者を消費者と同一の政策で融資を抑制し、資金調達が不十分に終わると、これら企業は支払い不能の状態に陥り、近い将来の経営破綻に直結するからです。
政府は、貸金業法の改正に伴い、事業者と新規事業創業者に対する総量規制を導入しないことで、この影響を最小限に抑えようとしましたが、総量規制と同時に上限金利が引き下げられたことにより、貸金業者が無担保融資等のハイリスクな融資では貸倒れに見合う十分な利息収入が期待できないとして、これら融資を停止しています。
これにより、貸金業者による無担保融資残高は大幅に減少し、担保を持たない事業者は、ヤミ金融からの借入、もしくは廃業や倒産に追い込まれています。
リーマンショック以降、国内の企業倒産件数の統計数は徐々に減少し、一見、貸金業法改正の影響は無いように思えますが、負債総額1000万円未満の小規模倒産及び自主廃業した事業者の件数は増加の一途を辿っています。

金融庁が公開した「貸金業関係資料」の集計による各数値を表記します。

事業者向け貸付金残高貸付件数貸金業登録社数(内事業者金融業者数)
平成19年3月23兆3674億円46万0361件11,832(1,946)社
平成20年3月23兆5707億円39万8250件9,115(1,694)社
平成21年3月22兆1186億円22万9775件6,178(1,390)社
平成22年3月17兆2880億円17万8571件4,057(1,058)社
平成23年3月16兆5225億円14万3466件2,589( 914)社

(※事業者金融業者数とは、手形割引業者数と事業者向金融業者数を合算したもの)

上記のとおり、平成19年と平成23年の数値を比較すると、貸付金残高が30%、貸付件数で69%、貸金業登録社数では78%(事業者向け貸金業者は53%)、減少しています。これら集計で7兆円近く減少した貸付金残高と、31万件以上激減した貸付件数が、統計に表れない事業者の倒産と廃業件数を象徴していると考えます。
これらの信用収縮は、リーマンショック、貸金業法の改正、過払金の返還などにより多くの貸し手が正規貸金市場から退場した結果であります。政府は、貸金業法改正により、消費者の過剰消費を抑制し、その多重債務問題を改善することには成功したと自負していますが、その意に反し、消費者の消費減退による景気の悪化と、事業所の減少に伴う雇用の悪化に拍車をかけてしまいました。

当協会は、貸金市場の崩壊の危機に瀕し、これらの苦境を改善すべく、以下に記述する五項目の改善を提言いたします。法改正を前提に、ご再考を切にお願い申し上げます。

  1. 上限金利とその計算方法について
    当協会は、貸金業法の上限金利を年率25%~30%程度の金利水準に引き上げ、その計算方法を改め、閏年を365日とする年率計算に改正することを提言いたします。
    1. 上限金利について

      貸金業法の完全施行後、国内の事業者金融業者は次の融資及び手形、小切手の割引の新たな取扱いを廃止又は停止し、抑制しました。
      1. 無担保融資
      2. 貸付期間が一月に満たない、超短期の融資
      3. 新規事業開業資金の融資
      4. 流動性の低い担保での融資
      5. 十分な審査ができない即日の融資
      6. 振出人の信用度が低い手形の割引
      7. 満期日までの日数が一月に満たない、超短期手形の割引
      8. 小切手の割引
      これらの融資と手形、小切手の割引を抑制した最大の原因は、上限金利引き下げによる採算の悪化にありますが、最も大きくこの影響を受けたのが無担保融資であります。そもそも、預金取扱金融機関による中小零細企業向融資においては、担保の徴求、又は保証協会による保証を融資の基本条件としており、無担保による融資はほとんど期待できません。
      中小零細企業向けの無担保融資を経営方針としていた、数少ない金融機関の新銀行東京が経営困難となり、振興銀行が経営破綻した事例からも明らかなように、財務基盤が脆弱な中小零細企業に対し、利息制限法の上限金利内にて、無担保融資を行うことは不可能に近い事なのです。しかし、誰かがこれをやらなければ、国内の中小零細企業の成長の芽を摘んでしまうことになります。政府は、この役割を預金取扱金融機関に肩代わりさせようとの見解ですが、預金取扱金融機関がこのようなリスクを負う融資ができないことは誰の目からも明らかです。このリスクの高い分野の担い手は貸金業者だけなのです。
      私共貸金業者が国内の中小零細企業に対する無担保融資を再開できる金利帯は、年率25%以上であると考えています。次に、その根拠となる無担保融資を取り扱う私共事業者向貸金業者のコストの内訳を示します。

      中小貸金業者の資金調達金利年率 4%~9%
      販売管理費年率換算で 5%~6%
      貸倒れに伴う債権償却4%~8%
      過払金の返還同上3%~5%
      無担保融資のコスト合計16%~28%

      事業者金融による融資は、消費者金融のような自動契約機を利用した非対面融資ではなく、資金需要者の事務所を訪問する対面融資であるため、人件費等の販売管理費が高く、コスト合計の約1/3を占めます。
      また、全国の保証協会は貸金業者に対する保証を行わず、さらに、銀行は貸金業者に対する融資に消極的なため、低利融資を受けられない貸金業者が大半を占め、これら貸金業者は、国内に数社存在する「リファイナンス業者」と呼ばれる同業者から資金を調達しているため、その資金調達にも多くのコストを必要とします。
      さらに、無担保融資では資金需要者から決算書類等、多数の会計書類を徴求して十分な審査を尽くしても、融資を受けた直後に破産を申し立てる等、悪質な借主も後を絶たず、さらに担保も十分ではないため、おのずと債権償却は高水準となります。

      事業性資金の資金需要は、支払日から集金日までの数日という超短期間も珍しくありません。例えば「手形の決済日から月末迄、100万円を5日間だけ借りたい」というケース。この場合、15日未満の貸付であるため、現在の上限金利(年率15%)の15日分の利息を適用いたしますが、当該利息は、僅か6,164円(閏年は6,147円)にすぎません。この利息は貸付金元本の僅か0.6%余りで、商社が商取引を仲立ちする場合に5~8%程度の手数料が必要となる場合と比較すると、融資の利幅は僅かで、他の業態と比較しても貸金業者が如何に薄利であるかをご理解いただけると思います。

      上限金利が29.2%の時代には、こうした超短期融資は盛んに行われ、相応の経済波及効果がありました。上限金利が引き下げられた現在もなお事業者には超短期の資金需要はあるものの、貸金業者がその融資を停止したため、超高利なヤミ金融が代役を果たすという皮肉な結果となっています。

      また、事業者の商取引に伴う利幅は区々ですが、仮に100万円の事業資金を年率29.2%の利息で30日間借りたとしても、支払う利息は24,000円(閏年の場合23,934円)です。これに仕入代金と販管費を加算した金額以上の売上があれば事業者としては利益が見込めます。つまり、たとえ年率29.2%で借りた借入金で事業を行ったとしても、それ以上の利益が見込める事業ならば、他者がその借入を抑制し、ビジネスチャンスを喪失させる理由はないと考えます。仮に、事業者の利幅が少なく、貸金業者に支払った利息により幾らかの損失を計上するとしても、資金不足を原因とする支払い停止により、破綻に至った場合の莫大な不利益とはとても比較できるものではありません。

      貸金業者の事業者に対する融資は、そのほとんどが元本100万円以上であるため、現在の上限金利は年率15%ですが、この金利水準の無担保融資で利益を計上できる貸金業者はありません。よって、前述した金利水準でなければ資金の供給役は果たせません。

      よって、貸金業法の見直しによって、貸金業者として登録された業者においては元本に係わりなく年率25%~30%を利率の上限とするべきと考えております。これにより、健全に融資ができる体制が構築され、地域社会に貢献できる健全な貸金市場に育成できると考えます。

    2. 金利の計算方法について

      利息制限法下の上限金利では、同じ年率で計算しても平年と閏年では、1年の日数の違いから1日あたりの利息が異なるため、これを平年、閏年に係わりなく、常に1年を365日とする金利計算に統一すべきと考えます。
      仮に、100万円を年率15%で借りて、30日分の利息を支払う場合、平年では12,328円であるのに対し、閏年では12,295円であり、33円の差額が生じます。この差額は、年率で計算する場合の一年が365日又は366日であるかの1日の差ですが、利息の計算期間が平年の12月20日から閏年の1月20日までの利息を計算する場合、平年の11日間は365日、閏年の19日間は366日を各一年とする利息計算をしなければなりません。この様に平年と閏年に跨る利息計算の場合は、平年と閏年を個別に計算し、それらを合算するという煩雑な計算が必要となります。さらに、貸金業者が手数料等を天引きした場合の実質年率の計算ともなると、より複雑な計算が必要となり、資金需要者が容易に計算できるものではありません。 消費者の生活や事業者の経営に密着した利息計算には誰しもが容易に計算できる利便性が必要ですから、平年と閏年の違いに無関係な、日歩計算に改めるというのも一考ですが、年率計算が浸透した社会を日歩計算に戻すのは現実的ではありません。 したがって、「上限金利」を規制する場合には、平年、閏年に係わらず1年を365日とする年率計算で年利○○%以下と改めるべきと考えます。
      そこで問題になるのが「実質年率」です、この計算方法は、閏年には366日を用いなければならず、前記「上限金利」とその誤差が生じてしまいます。このため、実質年率に代わる概念として、常に一年を365日とする実質的な金利として「定日金利(仮名)」なる概念を創設し、貸金業者の規制金利とすることを提言いたします。
  2. ヤミ金融の存在
    現在のヤミ金融は、ヤミ金対策法の施行により巧妙に姿を変え、金融業以外の職業の肩書を持ち、資金需要者からは金融を業としない「お金を貸してくれる親切な人」であるかのように振る舞い、債務整理を担当する弁護士ですら、一般人であるかこの判断に迷う程、巧妙と言われています。

    「悪貨が良貨を駆逐する」との言葉あるように、ヤミ金融はもはや現代社会に深く根付いてしまいました。この諺が由来した16世紀のイギリスでは、悪貨を発行していたのは政府であり、ヘンリー八世が銀の含有量を落としたシリング貨を流通させた結果、人々はそれまで使っていた良貨をしまい込み、悪貨ばかりを使うようになり、良貨が市場から消え、悪貨にとって代わられてしまいました。つまり、良貨と悪貨が共存すると、悪貨に良貨は駆逐されてしまうのです。
     ヤミ金融が跋扈している現状も同じ原理であると考えられます。資金需要者が融資を受ける際の貸金業者の選択基準は、①必要とする金額の借入が可能かどうか、②利息を含めた元利金が返済できる金額かどうか、③借入手続きの簡易さ、の三点であります。このため、貸主が、正規の貸金業者かヤミ金融であるかの区別は必要としていないのが現実です。
     よって、利用者は貸金業法を順守するが審査の厳しい正規業者を良貨と同じ様にしまい込み、手軽に利用できる悪貨であるヤミ金融を利用し、結果として法規制の効かないヤミ世界に引きずり込まれてしまっているのです。
    このような現状を正常化させる方法は、唯一、貸金業法を順守する貸金業者がヤミ金融以上に利用者から支持される「貸付基準」に見直し、資金供給者と資金需要者が正規貸金市場にて取引できる状態に戻すことです。
  3. 総量規制に関する法律の不具合
    個人事業主に対する例外貸付の必須書類である事業計画、収支計画及び資金計画(以下「三計画」という。)を廃止すべきです。以下にその理由を詳述します。

    貸金業法下の個人事業主は、総量規制の例外となっていますが、弁済能力の有無に係わりなく大半の事例でこの例外貸付実行時の必須書類である三計画が徴求できずに融資実行に至らない、というのが実情です。
    個人事業主は融資の申し込みに際し、三計画を徴求することが法令で義務付けられていますが、これら三計画を自主的に作成できる資金需要者は皆無です。よって、貸金業者は、日本貸金業協会が作成した雛形を資金需要者に提供し、これら計画の作成を促すものの、資金需要者のみでは三計画の作成ができないため、申込受付担当者がこの作成を助言しなければならないのが実情です。そのため、申込受付担当者と資金需要者が数回のFAXや電話での助言を繰り返さねばならず、結局は、融資予定日に間に合わないため身内やヤミ金融から借りてしまったという事例も珍しくありません。個人事業主を対象とした、こうした現状の規制は、事実上の総量規制と同じであると考えられます。
    個人事業主を対象としたこれら規制を撤廃し、融資の基準を法人事業主と同一にすべきと提言いたします。
  4. 手形割引に関する法律の不具合
    商業手形割引を貸金業法と利息制限法の対象外とし、利率の上限を年25%とすべきと考えます。
    そもそも商業手形の割引は、「手形という債権の売買」であって金銭消費貸借ではありません。また、企業の会計では、手形割引に伴う割引料を利息ではなく「手形売却損」として計上しているにもかかわらず、貸金業法においては金銭の貸付けと手形割引を一括りに「貸付け」と定義し、金銭の貸付けと同等の金利、契約手続き、事前の説明等を義務付け、「弁済の方法」など手形割引には存在しない概念を契約で定め、説明しなければなりません。
    これら無意味で煩雑な手続きが、手形割引の事務コストを押し上げ、金利の上限が引き下げられたことにより、リスクに見合う割引料が徴収できないため、一部の手形割引が不可能となっています。

    よって商業手形割引と、手形貸付に代表される手形割引の体を成す実質的な貸付との明確な区別を行い、手形割引の体を成す実質的な貸付を貸金業法の対象とし、商業手形割引を「貸付け」の定義から除外し、貸金業法の対象外とすべきです。

    次に手形割引の体を成す貸付の特徴と商業手形割引の特徴を表記します。

    手形割引の体を成す貸付の特徴
    • 手形の成因となる商取引が存在しない
    • 決済資金は割引依頼人が実質負担する
    • 手形貸付

    商業手形割引の特徴
    • 手形の成因となる商取引が存在する
    • 手形発行者が手形金を決済する
    パブコメに対する金融庁の考えでは、「手形割引に利息制限法の適用があるか否かについては個別事例ごとに実態に即して判断される事柄と考えられます。(通番45.14)」と、曖昧な表現をしていますが利息制限法と貸金業法は手形割引の対象外とし、新たな利率の上限を、年率25%程度に定めるべきと考えます。これにより手形が有している流動性が増し、事業者の資金繰りは確実に改善いたします。
  5. 過払い問題について

    昭和58年11月貸金業規制法が制定され、「任意の支払いであること」等を要件として利息制限法を超えた出資法内の金利の有効性、いわゆるみなし弁済が規定されました。しかし、平成18年1月13日の最高裁判決は、前述の「任意の支払いであること」という要件に対し、貸金業者の契約書面中にある「期限の利益喪失文言」を強制と捉え、みなし弁済規定の要件を満たしていないとの非常に乱暴で理不尽な判決を下し、貸金業者に過払金の返還を命じました。この事は、タクシーに乗ってバス料金との差額を過去に遡って請求する行為と等しく、これが現実となれば全国のタクシー会社は破綻するでしょう。また、タクシー会社とバス会社の利便性の違いや、それに必要なコストを無視し、単に料金が高いタクシー会社を社会悪と捉え、かつ経済倫理を無視した、結論ありきの魔女狩り的判決だったと言わざるを得ません。

     平成18年当時の与党自民党の金融調査会「貸金業制度等に関する小委員会」委員長として改正貸金業法の立法に関わった増原義剛氏は、平成18年1月18日の最高裁判決について、業界誌のインタビューにて「個別の具体的妥当性はともかく、法的安定性に対して決定的ダメージを与えたという点で、法律家としてバランスを欠いた問題ある判決であったと思います。(当該判決は、)マスコミ論調に流された随分乱暴な解釈です。」と、司法の暴挙を指摘しています。また、過払金問題については「5年前に我々が法改正をする際に、ここまで過払いが大きくなることが予測できていたならば、立法で措置していたでしょう。」として「完済している場合は、任意性、書面性を満たしているものとみなすという規定を入れることで対応できたように思います。」とコメントしております。
    また、慶応義塾大学法学部教授の小林節先生においては、同インタビューにて、「元より虚構である上にモラル・ハザードを惹起している、いわゆる過払い返還は遮断する。これだけの立法で事態は一気に好転するはずである。」と過払金問題は立法にて解決できると提示しておられます。

    現在の日本は、前述の最高裁判決により、立法の趣旨と異なる次の事象が発生しております。
    1. 既に債務を完済し、多重債務の状態にない者が過払金の返還を受けている。
    2. 破産管財人が破産者の過払金を回収している。
    3. 税務署が滞納した税金を取り立てるため、滞納者の過払金を回収している。
    過払金による最大の受益者は、「過払金バブル」と揶揄される弁護士や司法書士らであることは言うまでもありませんが、多重債務者を救済すべく策定された法律と、バランスを欠いた最高裁判決により、「多重債務にない者」、「破産財団」、「税務署(国)」にまで利益をもたらしましたが、これらの過払金を返還した貸金業者の多くは破綻してしまい、過払金に頼らず、借りたものは自力でコツコツ返済するという律儀な債務者(普通の債務者)にとっては、借入の機会を喪失するという不利益になっております。
    「角を矯めて牛を殺す」との諺どおり、貸金業界の現状は壊滅に向かっており、同時に資金需要者はヤミ金融を利用せざるをえない最悪の状態に向かっています。4万社を超えていた貸金業者登録件数は平成23年9月末日現在、既に2455社までに激減しており、この件数には、貸金業登録をしながら自ら融資をしない(又はできない)貸金業者も含まれておりますので、融資をする貸金業者数は半減すると見られております。 全国47都道府県の知事登録の貸金業者による事業者向け貸金残高は、東京都で8兆円の残高を維持しているものの、鳥取県では2億、福島県は1億、三重県は1億、山形県においては残高0と、地方ではほぼ壊滅状態にあります。これらの要因は、金利の引き下げと過払金問題であることは、言うまでもありません。

    当協会は、貸金業者の減少を食い止め、資金供給役として健全な貸金市場に参加し、地域経済の活性化に寄与するため、これら過払金を遮断する法律として、前述の増原義剛氏の言葉を借り「完済している場合は、任意性、書面性を満たしているものとみなす。」と定めるべきと提言いたします。

結び
私共事業者金融業者は、預金取扱金融機関にできない無担保による融資と手形割引により、企業の血液と言える資金を、経済の底辺といえる零細企業にまで供給する毛細血管と同じであると自負しておりましたが、貸金業者にとっての日本は、世界一厳しい金利規制国となり、資金需要者にとっては世界一借り入れの困難な国となってしまいました。
国内のノンバンクは、貸金業法改正により、バンクと同等の金利規制と高いコンプライアンスを求められ、さらに、最低純資産の引き上げや取り立て規制の強化により、法令を順守しない、あるいは、財務基盤が脆弱な貸金業者は壊滅しましたが、その結果として発生した急激な信用収縮により大量の金融難民が発生し、法規制の効かないヤミ金融を増殖させています。彼ら金融難民にとってヤミ金融は掛替えのないものとなり、その被害は依然として水面下で拡大しています。
現在の日本は、少子高齢化の進行により労働者人口が急速に減少し、景気後退に拍車がかかり、また、円高の進行により国内事業所の海外移転が増加し、雇用に悪影響が生じることが予想されます。これらの問題に対し政府は、あらゆる限りの政策を用いてこの影響を最小限に食い止めることが必要と考えています。当協会は、金利水準と行き過ぎた規制を緩和することによって消費が上向き、事業所の廃止が減り、雇用が生まれ、失業率と景気に改善が見込まれる事を提言いたします。
 また、私共事業者金融業者は地域密着の取引により地元中小零細企業との絆を築き今日まで共存共栄の関係を構築して参りましたが、上記五項目の問題によって、地方においては、事業者金融業者の衰退に伴い、倒産や廃業に追い込まれる事業者が増加しております。私共事業者金融業者が中小零細企業に経済の血液たる資金提供を再開するため、ご再考を切にお願い申し上げます。

以上